現在、最もホットなセクターは海運業です。
ここ10年は業績低迷によって、全くの不人気セクターでありました。
しかし、7月末から8月初旬の決算発表直後から株価は急騰し、8月のセクター別騰落率は+49.75%と圧倒的なパフォーマンスを記録している。
海運業セクター 644.61→965.33(49.75%) ※東京証券取引所 情報サービス部調べ
海運大手3社
9101 日本郵船 5880→8870(+50.85%)
9104 商船三井 5650→8500(+50.44%)
9107 川崎汽船 3720→5510(+48.12%)
このようになった背景は大手3社のコンテナ船事業を統合して誕生したOcean Network Express(ONE)の業績が大きく伸びているためです。
昨年夏から始まったコンテナ船料の上昇が今期に入ってさらに加速、前年比+86%の上昇を記録しています。
コンテナ運賃が上昇している背景には
・巣篭り消費による消費財輸送の増加
・コロナウイルス感染症拡大による港湾労働者不足による荷役作業の停滞
・コンテナが地域に遍在していることによる空運搬の増加
・船員の移動制限による運航の遅延
以上のことが起こっているためです。
さらにONEの業績を押し上げ要因となっているのは、コンテナ船料が最も高騰しているアジア発着の航路を多く運行しているためです。
ONEの2021年度4Qの純利益は前年同期比32倍の3,484億円。(2021年4月30日発表)
さらに今期、2022年度1Qの段階で2,559億円の純利益を計上しています。(2021年7月30日発表)
ONEの出資比率は日本郵船が38%、商船三井が31%、川崎汽船が31%。
単純計算、日本郵船972億、他2社793億の投資利益を得ていることになります。
この利益額はPER2~3倍に低下させるほど大きな比重を占めています。
そのため、コンテナ運賃の上昇が続く限り、海運大手3社の業績に大きく寄与してくれることになります。
その結果、海運大手3社は業績予想を大幅に上方修正、川崎汽船を除く2社は配当予想を大幅に増配することとなった。
日本郵船 前期200円→700円
商船三井 前期150円→550円
これにより配当利回り10%以上の超高配当銘柄へ変貌を遂げました。
このコンテナ船料の動向を知りたいのであれば、FBX:Global Container Freight Index (https://fbx.freightos.com/)で価格を閲覧することが可能です。(ウイークリー金曜更新、デイリーは有料)
また、コンテナ運賃と同様にバルチック海運指数(BDI)も今期に入って上昇を続けている。
BDI 2046→4132(+101.96%) ※8月末時点
これはリーマンショック前の海運バブルに沸いた2008年9月以来の高値です。
9110 NSユナイテッド海運 2746→3655(+33.10%)
指数上昇による業績への直接的な寄与度は測れないが、こちらの株価も大幅に上昇しています。
今後の株価動向としては、
・短期的視点
コンテナ運賃の動向を注視し、下落トレンドを早めに察知する。
・中期的視点
決算発表とその前に出される業績予想に注目が集まっている。
業績予想は早ければ9月下旬にも発表される可能性もある。
2022年度1Qよりも現在のコンテナ船料は上昇しているため、更なる業績の上方修正も考えられる。
そして、配当予想を未定にしていた川崎汽船が2016年以来の復配を実施するかも注目を集めている。
・長期的視点
2000年代中盤に海運バブルと言われる相場がありました。
この時は新興国需要の急増によるバラ積み船料(BDIなど)の高騰によって起きました。
リーマンショックまでの間、海運業の株価は大きく上昇しましたが、リーマンショックによる物流の停滞でバラ積み船料と共に株価も急落。
需給は一旦巻き戻しが発生すると再び戻ることはありません。
傭船料との逆ザヤが発生し、運行すればするほど赤字になるほどでした。
その後10年の間に多くのバラ積み船専業企業は債務超過や統廃合する事態にまで発展しました。
今回の海運バブルも終着点はコロナウイルス克服による港湾の正常化です。
永続的に好業績が続く可能性は非常に低いと思われます。その場合には持ち株を逃げ遅れたものに押しつけ、割安と飛びついたものに売り浴びせれば大丈夫です。
当情報は個人的見解・相場観に基づくものです。
従って、その正確性・信頼性を保証するものではありません。
当情報は、投資のご参考にされることを目的としており、相場見通し等の確実性を保証するものではありません。
最終的な判断はご自身で行われますようお願い致します。
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