9月後半から中国大手不動産会社の債務不履行問題、アメリカの債務上限問題やインフレ懸念によって、株式市場は大きく下落しました。

NASDAQ1009月初めの最高値から10%ほど下落し、それにレバレッジを掛けていたETF(レバレッジNASDAQ100)は20%近く下落してしまいました。

今年の中頃から「レバナス!レバナス!」と、市場のトレンドのように個人投資家の間で活況を呈していたので、このような事象は新規購入者にとって、青天の霹靂であったことでしょう。

レバナスは年初から30%も上昇したETF界の雄であり、保有しなければ他者と運用収益に差がついてしまうと考えるのは、ごもっともだと思います。

そして、多くの人がオススメに上げる金融商品だったので、リスクを無視した取引も多くあったことと思われます。

 

ただ、今回の下落では市場心理の強弱を表すVIXは、30にすら達していません

過去の相場から言えば、今回の下落相場はかなりの頻度で起こる、一般的な下落相場だったのです。

もっと言えば、暴落と称する事態まで市場心理が悪化していないにも関わらず、このような大きな下落が起きてしまったことは、レバレッジETFの最大の弱点が露呈したことになります。

 

では、もし再びコロナショックやリーマンショックのような金融危機が起こった場合、レバレッジETFを保有していたらどのような末路を辿ってしまうのでしょうか?

ここで、100年に1度と言われたリーマンショックが、どのようなものだったか考察したいと思います。

リーマンショックのことは投資している人であれば、すでに多くのことを知っていると思われますので、説明は省略します。

 

リーマンショックは2008年9月に起き、下落期間は6か月におよびます。

最大下落率は約30%、多くの投資家が損失を被り市場を去りました。

もちろん、この時もレバレッジNASDAQ100QLD)はありました。

では、その推移を見ていこうと思います。

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これは2008年1月から201012月までのグラフになります。

2008年の相場は前年のサブプライムローン問題の影響から上値は重く、経済減速懸念も起きていました。

リーマンショック前であっても市場の安定感がなく、QLDが年初から約30%下落した時期もありました。

その後盛り返しはするが、市場心理の悪化は止まらず、ついにリーマンショックが起こります。

その下落は凄まじく、NASDAQ100は年初から50%下落、QLDに至っては80%も下落してしまいます。

為替も考慮すると、1ドル110から90円へドル安が進んだのでさらに損失は広がります。

QLDを年初に110万円買っていたら、年末にはたったの20万円。


資産20万円で含み損90万円。

4.5倍上昇しなければ、元本すら回収できません。

どうでしょうか?
涙を流しながら、紙くずになったレバナスを保有して、バラ色の未来を夢を見ていられますか?

せっかく汗水たらして稼いだお金が、金融のブラックホールに消えていっちゃったんです。
非常に難しいと思います。

 

その後、20093月まで市場は低迷を続けましたが、経済対策が練られてからは上昇に転じました。

そして約1年半をかけてNASDAQ100はリーマンショック以前の水準まで株価を戻すに至ります。

 

ここで気付くことは、レバレッジのかかったQLDの戻りがQQQとさほど変わらないということです。

さらに理論値ではあるが3倍のレバレッジのかかったTQQQの戻りはQQQQLDと比べて悪いことです。


これはレバレッジ減価で説明できます。

通常のレバレッジはかかってない株式は10%下落すれば11.1%上昇すれば元の価格に戻ります。

しかし、レバレッジが2倍かかっていると10%の下落は20%の下落になります。

そうすると、元の価格に戻るには25%上昇しなければなりません。

レバレッジはかかってない株式で単純換算すれば12.5%の上昇が必要です。

 

レバレッジ1倍  100 → 90-10%) → 100+11.1%)

レバレッジ2倍  100 → 80(-20%) → 97.8(+22.2%)

レバレッジ3倍  100 → 70(-30%) → 93.3(+33.3%)

 

レバレッジETF一本調子で上昇している場合には、これ以上ない商品です。

しかし、市場が大きく上下する相場やレンジ相場であればデメリットしかありません。

今回の単なる下落相場で精神的負担を感じたのであれば、レバレッジETFを持つことは避けた方が良いと思います。