
ここ数年、不動産保有企業へのTOBやMBOが盛んに行われています。
昨年話題になったのが、ユニゾHDへのEBOに対し、HISや投資ファンドから敵対的買収がかかり、短期間で株価が3倍以上に値上りしたことが記憶に新しいと思います。
これはユニゾHDの保有不動産に多額の含み益があるにも関わらず、株価が安値で放置されていたため起こったこととも言えます。
その他にも事例はあります。
・NTTによる、NTT都市開発の完全子会社化
・読売新聞グループによる、よみうりランドへのTOB
・海外投資ファンドによる、昭和飛行機へのTOB
・日本商業開発による、ツノダへのTOB
買収された企業は全て、保有不動産の時価が株価へ適切に評価されていなかったために起こったと言えます。
また、現在も片倉工業に対するMBOや商船三井によるダイビルの完全子会社化が行われており、同じ理由と考えられます。
片倉工業はさいたま新都心にあるコクーンシティを保有しており、含み益は1,000億円とも言えます。
ダイビルは東京、大阪に大規模なオフィスタワーを所有している中堅デベロッパーでこちらも含み益は2,000億円を超えるとも言われています。
買収価格を上回る不動産時価があれば、それだけで買収費用をペイすることができるので、買収へのハードルが他より低いと言えます。
ただし、簡単に売買ができない郊外の不動産であったり、株主構成から買収が困難である場合にはこれにあたりません。
また、羽田空港の地主である日本空港ビルデングのように時価総額の高い企業は買収が実現しにくいでしょう。
ここでいくつか不動産含み益銘柄を紹介します。
・ダイドーリミテッド
秋葉原駅から至近にオフィスビルを所有。小田原の工場跡地はダイナシティという地域最大のショッピングセンターを運営しています。
・飯野海運
虎ノ門地区に自社ビルの他、共同保有のビルを所有。公官庁と隣接しているためオフィス需要は非常に高い。
・テーオーシー
ニュー・オータニ系の不動産賃貸を主事業としている企業。品川区五反田地区や港区有明に複数オフィスビルを構えている。
・安田倉庫
旧財閥系の準大手倉庫会社。港区有明や横浜市西区に小規模オフィスビルを所有。
・澁澤倉庫
安田倉庫と同様、旧財閥系の準大手倉庫会社。江東区永代地区にオフィスビルを複数所有。
・東京楽天地
阪急阪神東宝グループ。墨田区錦糸町周辺に大規模商業ビルを多数保有し、不動産賃貸を主事業としている。
どれも歴史ある企業であり、都内に優良な物件を多く所有しています。
ダイドーリミテッドや飯野海運のように独立色の強い企業とテーオーシーや東京楽天地のようにグループ関連企業や旧財閥系などあるが、どれがTOBを受けやすいかはほとんど影響ありません。
ただ、グループ系の企業に対するTOBでは波乱は起きにくく、TOBを発表した価格で買収が完了することが多いです。
そのため、テーオーシーや東京楽天地はTOBを受けやすいが、取引価格から大きく乖離した買付値段は出ない可能性があります。
現にテーオーシーは2007年に一度MBOを発表したが買収値段が安く、敵対的TOBを招き入れてしまい不成立になった経緯があります。
そして、飯野海運は海運業のような業績変動の大きい企業を不動産目的で買収するのは非常に困難な場合があります。
海運業は不動産よりも船舶が固定資産を占める割合が高い傾向にあり「不動産を買うのに船まで付いてくる」というのはなかなか難しいものがあります。
しかし一方で、商船三井がダイビルに対してTOBをしたように、海運大手3社には好業績による潤沢な資金があります。
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