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2022年3月期決算でもっとも利益上昇率を上げた業種は海運セクターです。

大手の一角である日本郵船の最終利益は1兆円を超え、昨年比4倍以上の増益を果たしました。

この高収益を支えたのは、海運大手3社のコンテナ船事業を統合した持分適用会社「ONEジャパン」の存在です。

昨年より続くコンテナ船運賃の高騰が、ONEジャパンの業績に寄与したことが主な要因となります。

 

しかし、ここに来てコンテナ船の運賃市況に陰りが見え始めています。

4月まで高値維持を続けていた運賃市況が5月に入り値崩れを起こしているのです。

まさに崖から転がり落ちるように、毎週5~7%ものペースで下落が続いています。

 

これは一大消費地アメリカの消費動向がパンデミック以前の状態に戻り始め、過剰在庫の削減が行われ始めたことによるものとされています。

現在、FRBはインフレ対策として利上げへの積極姿勢を見せており、その効果が普及したことでインフレ圧力が和らぎ始めているとされています。

インフレ下では早め早めに商品を購入することで節約することできる利点がありますが、インフレが収まってしまえばその利点がなくなり、過剰に在庫を持つリスクが発生してしまいます。

そのため、インフレが収まり始めた現状では、新規の購買需要が細っていると考えられています。

 

また、貨物の輸送需要で注目したいのが海外資産の引揚げ需要です。

海外のロックダウンやロシアのウクライナ侵攻によるものを合わせ、地政学的リスクの観点から海外に在庫を持つリスクよりも米国で在庫を保管したいという需要がありました。

しかしここにきて、それらの需要が一巡し、運賃の下落が起こっているとされています。

 

これらの理由から断続的にコンテナ運賃の下落が起これば、昨年のような収益を上げることは非常に難しいものになります。

収益を上げなければ配当の減少、株価の下落を招きます。

現状、海運セクターへの投資は十分熟慮する必要があると思います。

逆に言えば空売りという手法も検討の余地はあるということです。

 

最悪のシナリオは、去年からのコンテナ船バブルが終息し、海運セクターのバブルもいっしょにはじけてしまうことです。

そうなれば、高値で買った株式は下落し、業績の悪化により配当金も減少することが考えられます。

そうなれば、多額の含み損を抱え、配当金で補うのに何十年もかかってしまう事態も起こり得ます。