現在の世界経済はインフレと戦っていると言えます。
そして、長年デフレと言われてきた日本でも、地学的リスクと円安によりインフレ圧力が高まっています。
一般消費者が主に考えるインフレは商品の価格に上昇、物価インフレです。
しかし、インフレにはもう1つ重要なものあります。
労働賃金の上昇、賃金インフレです。
インフレを考える場合には、この2つのインフレを分けて考えた方がより理解し深まると思います。
日本では物価インフレのみ報道されていますが、アメリカなどの先進国では物価インフレと同時に賃金インフレが起こっています。
これは賃金の上昇によって消費者の懐が温かくなったことで需要が高まり、物価インフレがさら加速させているためです。
そのため、急激なインフレ下での経済政策は、賃金インフレを抑え物価インフレも抑えようという方針が取られます。
つまり、需給で起こる物価インフレは市場経済によっていずれ解消されるが、需要高の元凶となる賃金インフレは必ず対処しなければならないのです。
これは賃金を一度上げてしまうと「恒久的に維持しなければならない」という労働者からの圧力が発生するからです。
ただし、現在のような急激な賃金インフレはなかなか起きるものではありません。
なぜなら、商品であれば増産減産で調整が可能だが、労働力はGDPの影響を受けるため、これが大きく変化しない限りパイも大きく変化しないからです。
業界的に一時的な繁栄や衰退はあれども、そこは労働者の流動性がカバーし、賃金インフレが起こらないようになっています。
賃金インフレが起こっている現状は、経済的に非常に懸念される状態に陥っており、早急に対処すべき課題なのです。
そのため、アメリカFRBなど主要国の中央銀行は大幅な利上げを実施しています。
これは利上げによって資金の借り入れを抑制させ、需要を低下させるためです。
本来、利上げは好景気をなるべく維持させるために行うものです。
しかし、現在の急速な利上げは好景気を維持するための政策ではなく、賃金インフレを抑えることが目的となっています。
強力に需要を低下させることで経済活動を抑制し、労働力のパイを奪うことで賃金インフレを抑制させようと考えているのです。
つまり、先進各国で利上げを断行している現状は、景気が後退するリスクよりもインフレが手に負えなくなるリスクを、より心配していると判断したことに他なりません。
つまり、現在の急速な利上げは景気を冷やして、好景気を長続きさせようと行っているものではないということです。
急速な利上げで景気を軟着陸させる方針よりも、永続的な物価上昇要因となる賃金インフレを抑制することが主目的となっています。
そのため、先進国では経済活動が減速傾向を示し始めましたが、賃金インフレの状況次第ではハードランディングも厭わない危険があるのです。
そのため、この期間に投資を行うのであれば、経済状態が急激に悪化する可能性があることを肝に銘じなければなりません。
これは、長期投資でも同じです。
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